FTR223エンジンオーバーホール組立編

MAINTENANCE

今回はFTR223のエンジンのオーバーホールをしたのでクランクケース組み立てからエンジンが再起動するまで順を追って公開したいと思います。

記事本文に登場する部品の名前はHONDA出版のFTR223パーツリストに記載されているものと統一してあります。

1.下準備

シリンダーや①クランクケースCOMP,Lの接合面に付着したガスケットなどは②オイルストーンで除去しておきます。

腰下組み立て

クランクケース組み立て

①クランクケースCOMP,L
②ベアリングラジアルボールを取り付けます。クランクケース分割のときに②ベアリングラジアルボールが抜けてしまいました。分割のときに②ベアリングラジアルボールがクランクケース側に残っていればこの作業は必要ありません。

①ベアリングインストーラーをなるべく垂直に叩きます。
こちらは分割のときに抜けてこなかった
別の②ベアリングラジアルボールです。

もしもクランクケースからベアリングラジアルボールが抜けてしまった場合はこのようにハンマーと①ベアリングインストーラーを使ってクランクケースにベアリングラジアルボールを打ち込みます。②はクランクケース分割の時に抜けてこなかった別のベアリングラジアルボールです

①ベアリングラジアルボール
まっすぐにきれいに打ち込めました。

トランスミッション組み立て

続いてギヤーの組み立てです。まず各ギヤーを①メインシャフトCOMP,トランスミッションに通して組み立てます。2番目に各ギヤーを②カウンターシャフト,トランスミッションに通します。3番目に③各フォークギヤーシフトを④シャフト,ギヤーシフトフォークガイドに通します。この3点と⑤ドラム,ギヤーシフトを一緒にクランクケースCOMP,Lに納めます。

この時ギヤーはオイルで滑りやすく、簡単にバラバラになってブッシュやワッシャーを紛失したりします。全て重要で必要な部品です。入れ忘れたり順番を間違えたりしないようにしましょう。

この時、手で①ドラム,ギヤーシフトを回し、ギヤーがニュートラルになっている時に②コンタクト,ニュートラルスイッチの銅部分と③ローター,ニュートラルスイッチが接触して導通があるかを確認します。また、③ローター,ニュートラルスイッチが他の部品に接触せずにスムーズに回転することも確認します。

ニュートラル時にここに導通がないとスターター回路が構成されませんのでニュートラルランプが点灯しない・スタンドを出した状態でエンジンがかけられなくなるなどの弊害が起きます。

ニュートラル位置の時はスイッチ同士が接触して導通あり 

ニュートラル以外の位置ではスイッチ同士は接触せず導通無し

テスターの黒端子を当てているコードは即席で作った延長コードです。

クランクシャフトをクランクケースCOMP.Lに納めます。

クランクケース結合

①クランクケースCOMP,Lに②ピン,ノックと③ガスケット,クランクケースを入れ④クランクケースCOMP,Rをはめ込みます。

右側は①ボルト,フランジ6×60で止まっています。ひとまず仮止めです。

左側は①ボルト,フランジ6×50が10箇所止めてあります。こちらもひとまず仮止めをします。

ガスケット,クランクケースを噛み込まないようボルトを均等に締め付けていきます。右側のボルト,フランジ6×60も本締めします。

「均等にボルトを締める」とはボルトを対角で締めることで偏りなく部品を締め付けることをいいます。

クランクケース腰下右側の組み立て

シフトカム・クラッチ・オイルポンプ取り付け

ドラム,ギヤーシフトに①ローラーを取り付けます。非常に小さな部品でここでクランクケース内に落下させたりするとクランクケースを分割し直して回収しなくてはならなくなりますのでラジオペンチを使うなどして細心の注意を払います。

クランクケースを起こしてドラム,ギヤーシフトを操作し、念のためコンタクト,ニュートラルスイッチとクランクケース間で接点がON/OFFしているか確認しておきます。

クラッチの取り付け

①カム,ギヤーシフトを②ボルト,6カク 6×25で取付けます。③ストッパーCOMP,ギヤーシフトドラムを④ボルト,ギヤーシフトドラムストッパーアームピボットで固定するのですが間にワッシャーがありますので入れ忘れたりクランクケース内に落としたりしないよう注意します。

続いてクラッチの取付けを行います。⑤ギヤーをクランクシャフトに⑥リングをメインシャフトに通しておきます。

①アウターCOMP,クラッチと②ワッシャーB,スプラインを取り付けます。

①プレート,クラッチプレッシャーと②ディスク,クラッチフリクションを取り付けます。

①プレート,クラッチを取り付けます。

ディスク,クラッチフリクション5枚とプレート,クラッチ4枚を交互になるように重ねていき、最後に①スプリング,ジャダーを取り付けます。

プレート,クラッチプレッシャーとプレート,クラッチの溝を揃えてます。

①センターCOMP,クラッチをかぶせた後②ワッシャー,ロック16mmを忘れないように入れます。

①ナット,ロック16mmを締め付けます。

ナット,ロック16mmを締め付けるには①クラッチホルダーを使うと便利です。①クラッチホルダーでクラッチの回転を防ぎつつ②クラッチロックナットレンチを使ってナット,ロック16mmを締め付けます。

①スプリング,クラッチを4箇所入れて②プレート,クラッチリフターを③ボルト,スペシャルフランジ6×22で締め付けます。クランクケースのボルト同様対角に均等に締め付けていきます。

①スピンドルCOMP,ギヤーシフトを挿入します。②ワッシャー,スラスト14mmの入れ忘れに注意します。

オイルポンプの取り付け

①Oリング9.4×2.4を2個取り付けます。

①スクリュー,フラット6×30で②オイルポンプ.ASSYを取り付けます。今回オイルポンプは解体しなかったのでまたの機会に。

オイルフィルターローターの取り付け

①ローター,COMPオイルフィルターに②ガスケット,オイルフィルターキャップを取り付けて③ワッシャー16mmと一緒にクランクシャフトに通します。

①ナットロック16mmで固定します。

①キャップ,オイルフィルターローターを②スクリュー,オーバルで固定します。

クランクケース右側が完成しました。

腰上組み立て

①キー,ウッドラフ4mmをプラスチックハンマーで打ち込みます。これも非常に小さな部品です。私はクランクケースを逆さまにして①キー,ウッドラフ4mmが入り込んでしまいそうな開口部をガムテープで目貼りしてから作業しました。

①チェーン,カム(104L)を②スプロケット,タイミング(17T)にかけ、③プレート,カムチェーンセッティングでずれないように④ボルト,フランジ6×12で固定します。

ピストンリングの取り付け

①ピストンに②③④リングセット,ピストントップリング③セカンドリング④オイルリングの順に取り付け、片側の⑤クリップ,ピストンピンを取り付けておきます。

ピストンの取り付け

①クランクシャフトとピストンが貫通するように②ピン,ピストンを挿入します。この作業も非常に小さな部品を扱います。ここで手元が狂ってクランクケースの中に部品を落としてしまったらまた最初からやり直しになります。私はここでもガムテープで開口部を養生しました。

ピン,ピストンを挿入したら反対側の①クリップ,ピストンピンを取り付けます。

スタッドボルトの取り付け

①ボルト,スタッドAと②ボルト,スタッドBを締めこみます。右側の2本(①ボルト,スタッドA)の方が短いです。間違えないようにしましょう。

ボルト,スタッドA,Bを締め込む時は①ナット,キャップと径の同じ要らないナットをダブルナットとし、1本の長いボルトのようにして締め込みます。取り付けが終わったらダブルナットを解けばボルト,スタッドA,Bの取り付けは完了です。

シリンダーの取り付け

①ピン,ノックを2箇所、②ガスケット,シリンダーをずれのないように取り付けます。

①キー,ウッドラフ4mmを一番上にもってくるとピストンが最上部に来ます。これを圧縮上死点と言います。ピストンが圧縮上死点の時が作業しやすいです。ここで①シリンダー,COMPの内面、ピストンの外周にエンジンオイルを塗布し、①シリンダーCOMPを取り付けます。

シリンダーヘッドの取り付け

①ピン,ノックを2箇所、②ガスケット,シリンダーヘッド、③ガイド,カムチェーンを取り付けます。

シリンダーヘッドの組み立て

①バルブ,インレットを燃焼室側からシリンダーヘッドに通し反対側から②スプリング,バルブアウターとスプリング,バルブインナーを③バルブスプリングコンプレッサーで挟み込みます。③バルブスプリングコンプレッサーを締め込むと②スプリング,バルブアウターが縮まるので①バルブ,インレットの溝にコッタを入れて③バルブスプリングコンプレッサーを緩めます。

シリンダーヘッドの取り付け

①ヘッドASSY,シリンダーを取り付けます。②ワッシャー,プレイン6mmを挿入したボルト,ソケットで①ヘッドASSY,シリンダーとシリンダーを固定します。その後③テンショナー,カムチェーンを取り付けます。カムチェーンには針金などを通してクランクケース内に落とさないようにします。

カムの取り付け

①ワッシャーCとボルト,カムチェーンテンショナーピボットを締め付けます。②カムシャフトに取り付け③スプロケット,カムを取り付け、カムチェーンをかけます。実はこの画像は②カムシャフトの間違った取り付けかたをした例です。

こちらが正しい取り付け向きのカムシャフトです。シリンダーヘッドに①ピン,ノック8×14を2箇所と②ピン,ノック10×12にOリングと③ラバー,オイルシールを取り付けます。

③ラバー,オイルシールにも向きがあります。逆向きでも取り付いてしまうので注意しましょう。上は誤取付け、下の向きで奥まで押し込んで正規です。

①キー,ウッドラフ4mmが真上を向いている時ピストンは圧縮上死点にいます。この状態でシリンダーヘッドの上面と②スプロケット,カムの「ー」マークが一直線に並んでいればOKです。

シリンダーヘッドカバーの取り付け

①シリンダーヘッドカバーも今回は分解せずに点検にとどめました。②バルブ,アームロッカーに変形や異常摩耗のないこと(特にカムシャフトの当たる青丸の部分)と③スクリュー,タペットアジャスティングに変形・摩耗のないことを確認します。

①シリンダーヘッドカバーに②液状ガスケットを塗って指で均等にならします。

①ワッシャー,シーリングとナット,シーリングを締めます。ナットを対角に締めていきます。

①ボルト,フランジを締めます。これも対角に締めていきます。このボルトを締めるのは必ず前の工程で締めたナット,シーリングの後にします。

はみ出た液状ガスケットをふき取ります。

カムチェーンテンショナーの取り付け

①リフターASSY,テンショナーを取り付けます。取り付け面にはガスケット,テンショナーリフターがありますので入れ忘れないようにします。②ボルト,フランジソケット6×16で締めますがワッシャー,シーリング6mmが入りますのでこちらも入れ忘れに注意します。

リフターASSY,テンショナーの中心にアジャスターがありますのでテンショナー,カムチェーンでチェーン,カム(104L)をピンと張ります。

クランクケース腰下左側の組み立て

フライホイールの取り付け

①カラー,スターティングドリブンギヤーを挿入します。

①ギヤーCOMP,スターティングドリブンを挿入します。

①フライホイールを②ワッシャーと③ボルトで取り付けます。この時フライホイールのキー溝と先の工程で取り付けたキー,ウッドラフ4mmを合わせるように注意します。

フライホイールのボルトを締める時は①プーリーホルダーが活躍します。事前にフライホイールとプーリーホルダーをパーツクリーナーで脱脂して滑らないようにしておくと良いです。

①カバー,L.シリンダーヘッドを②ボルト,フランジ6×25で取り付けます。この時①カバー,L.シリンダーヘッドにはOリングとガスケット,パルスジェネレーターベースの入れ忘れに注意します。

バルブクリアランスの調整

バルブクリアランスの調整を行います。事前にフライホイールに刻印されている「T」が真上に来るようにフライホイールを回します。刻印はキー,ウッドラフ4mmと同じ向きになりますので刻印が真上を向いている時キー,ウッドラフ4mmも真上を向いていることになりピストンが圧縮上死点にいることになります。この状態で①ナット,タペットアジャスティングを緩め②スクリュー,タペットアジャスティングでバルブとの隙間を調整します。撮影のためラジオペンチで②スクリュー,タペットアジャスティングを回していますが専用工具もあります。③シックネスゲージを入れ0.1mmになるよう調整したら①ナット,タペットアジャスティングを締めて調整作業は完了です。この調整作業を吸気側、排気側2箇所行います。

エンジンの搭載

ここまで組み立てが進むとエンジンをフレームに搭載できるようになります。単気筒とはいえ中々の重量なのでジャッキなどでエンジンを支えます。ボルト穴の微調整もできるのでジャッキはおすすめです。

A部の拡大です。ボルトは全て車体左側から挿入し右側をナット止めします。下部は①ボルト,フランジ8×102とナット,フランジ8mmで締めます。ただし、間にカラー,エンジンマウンティングが入ります。上部は2枚の②プレートL(R)フロントエンジンハンガーに③ボルト,フランジ8×87と④ボルト,フランジ8×73を通しナット,フランジ8mmで固定します。

B部の拡大です。上部は①ボルト,フランジ10×233にカラー,R.エンジンディスタンスを通してナット止め、下部は②ボルト,フランジ10×110をナット止めです。ナットはナット,フランジ10mmを使用します。

C部の拡大です。2枚の①プレートL(R),エンジンハンガーアッパーをボルト3本で固定します。②はボルト,フランジ8×44、③はボルト,フランジ8×60でそれぞれナット,フランジ8mmで締め付けます。

①カバー,Lクランクケースを取り付ける準備をします。②コンタクト,ニュートラルスイッチに③ハーネス,ワイヤーの「赤/若葉」色の線の終端を先に通しておきます。

クランクケースカバーLの取り付け

①ピン,ノック10×14を2箇所取り付けて②ガスケット,Lカバーを合わせます。クランクケースに③ギヤー,アイドルを先に納め④シャフト,アイドルギヤーを通します。⑤キャップ,タペットアジャスティングホールを取り付けておきます。

カバー,Lクランクケース。左から①ボルト,フランジ6×40が4本。②ボルト,フランジ6×60が1本。③ボルト,フランジ6×70が2本。④ボルト,フランジ6×80が1本です。

ボルトの長さをボルト長さは①が40、②が60、③が70、④が80です。間違えないようにボルトを仮止めしたら対角に締めて⑤カバー,Lクランクケースを取り付けます。

先に通して置いた①コンタクト,ニュートラルスイッチをクランクケースに差し込みます。ギアをニュートラルにして「赤/若葉」のコードとフレームの間で導通が取れればニュートラルスイッチが正常に接触している証拠です。ハーネスを②クランパー,ワイヤーハーネスと③ボルト,フランジ6×14で固定します。

クランクケースカバーRの取り付け

カバーCOMP,Rクランクケースを取り付けるボルトは①ボルト,フランジ6×40が11本と②ボルト,フランジ6×50が1本です。

①ピン,ノック8×14を2箇所取り付けておきます②ガスケット,Rカバーを合わせておきます。

50のボルトが②に入り残りのボルトは①40を使用します。

マニホールド・クラッチワイヤー・スターターモーターの取り付け

①クラッチワイヤー、②セルモーター、③インシュレーター,キャブレターを取り付けます。

これ以降マフラー、キャブレター、バッテリー、燃料タンク、シートと部品を取り付けていきますが、人それぞれ社外品をつけている方がいたり工程が皆が皆同じではないと思いますので割愛します。そもそもこの記事を見てエンジンのオーバーホールに挑戦するようなレベルの人にはここから先の解説は必要無いと思います。

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